日仏討論会「市民と企業、私たちの選択が未来を変える」開催報告 [fr]

 日仏討論会「市民と企業 私たちの選択が未来を変える」が11月13日、アンスティチュ・フランセ東京で開催されました。

日仏討論会「市民と企業、私たちの選択が未来を変える」、2018年11月13日、アンスティチュ・フランセ東京
日仏討論会「市民と企業、私たちの選択が未来を変える」、2018年11月13日、アンスティチュ・フランセ東京
© 在日フランス大使館
左から、マエル・ギウー、佐藤多加子、エレーヌ・ビネ、末吉里花、辻信一、元村有希子(敬称略)
左から、マエル・ギウー、佐藤多加子、エレーヌ・ビネ、末吉里花、辻信一、元村有希子(敬称略)
© 在日フランス大使館
持続可能な開発目標の17の目標
持続可能な開発目標の17の目標
© 国際連合

 
 ローラン・ピック駐日フランス大使と環境省の小野洋大臣官房審議官による開会のあいさつに続いて、日仏のパネリストが登壇しました。フランスからはエネルコープの国際協力責任者のマエル・ギユー氏、ラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!社広報部長のエレーヌ・ビネ氏、日本からはエシカル協会代表理事の末吉里花氏、リコー・サステナビリティ推進本部審議役の佐藤多加子氏、明治学院大学教授の辻信一氏が参加しました。パネリストの略歴については、アンスティチュ・フランセ東京の関連ページをご覧ください。

 毎日新聞社科学環境部長の元村有希子氏が満場の聴講者の前で進行役を務めた討論会では、フランスと日本の取り組み方の共通点に加えて相違点も明らかになりました。

 最後にヴェオリア・ジャパンの野田由美子社長が閉会のあいさつを行いました。本討論会の公式パートナーである同社は、水・廃棄物管理や再生可能エネルギーのソリューションを考案、提供しています。

確固たる国際的枠組み、持続可能な開発のための2030アジェンダとパリ協定

 環境省の小野洋大臣官房審議官は、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)を機に始まった日仏環境省の協力に改めて触れながら、国際舞台におけるフランスの環境面での積極的関与に敬意を表しました。さらに2019年はフランスがG7議長国を務める一方、日本がG20議長国を務め、中でもG20史上初となる環境大臣会合の開催が予定されるなど、日仏両国にとって地球環境保全の諸課題をめぐり関係を一層深める機会になると述べました。小野氏は2015年に採択されたパリ協定と2030アジェンダに触れながら、これらの国際的枠組みは必要ではあるが万全ではなく、企業や市民による地域レベルの活動が欠かせない点を改めて指摘しました。さらに環境問題に対応して展開され、経済成長の源泉となるイノベーションの重要性を強調しました。

 ピック駐日フランス大使は開会のあいさつで、最近公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)特別報告書に言及し、気候変動対策とパリ協定の履行が待ったなしであることを改めて指摘しました。この報告書はすべてのアクターに対し、迅速な行動と生産消費形態の抜本的な変革を呼びかけています。

あらゆるレベルですべての人を結集する取り組み

 エレーヌ・ビネ氏は食農分離の問題に対応したラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!社の事例を紹介しました。ラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!はインターネット上のプラットフォームで利用者をつなげることで短い流通経路を生み出しました。利用者は現在、ヨーロッパで消費者21万人、生産者1,000人を数えます。各生産者は半径250キロメートル以内に居住する消費者とつながっています。

 エシカル協会を設立した末吉里花氏は、日本で倫理的消費(エシカル消費)の理念に対する知識が不足している問題について述べました。「私たちの身の周りは物であふれているのに、それらがどこから来ているのかは知りません」。末吉氏はどのようにして倫理的消費が環境保全のみならず、人権尊重や貧困対策に貢献するかについて説明しました。いずれも国連の持続可能な開発目標達成の鍵を握る課題です。そうしたことからエシカル協会では、若い世代の倫理的消費に対する意識を高めようと、学校向けの啓発活動にも力を入れています。

 日本でスローライフ運動を提唱した辻信一教授は、よりシンプルでより地域密着型のローカル経済モデルへの回帰に向けた積極的な行動を紹介しました。さらにグローバル経済を批判しながら、しあわせの経済重視へと、経済成長の追求よりも「健やかな人生」の探求へとアプローチを転換するよう呼びかけました。

環境保全に取り組む企業

 マエル・ギユー氏はエネルコープの考え方を、ラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!が食料分野で開発した短い流通経路の考え方になぞらえて紹介しました。エネルコープも消費者と生産者の距離、この場合は100%再生可能エネルギーの生産者との距離を縮めようとしています。エネルコープは2005年、数十年前からフランスで発展した集中型エネルギーの代替を提供するため、NGO(非政府組織)と再生可能エネルギーの専門家によって設立され、協調的かつ民主的で透明性のある経済モデルを採用しました。すべての収益は同社の計画に再投資されています。

 佐藤多加子氏はリコーの長年にわたる環境への取り組みを紹介しました。20年前から環境保全に取り組むリコーは、日本企業の中でも先駆的な存在です。例えば日本企業として初めて国際イニシアティブRE100に加盟し、事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達する道を歩み始めました。さらに2015年、自社の戦略を再定義し、17の持続可能な開発目標のうち8つの目標を最も高く掲げました。リコーはSBT(Science Based Targets)イニシアティブや内部炭素課金制度(CDPジャパンとともに)などにも取り組んでいます。リコーにとってこうした環境のための努力、より広義には企業の社会的・環境的責任の拡大は、いずれ必ず採算が取れる投資です。佐藤多加子氏は消費者目線で次のように断言しました。「企業は消費者の要求に応えます。より責任ある企業のために声を上げるのは消費者です」。メディアも市民や消費者の意識向上のために重要な役割を果たします。

力を持つ消費者、先行する若い世代

 パネリストは「グローバルに考え、ローカルに行動する」という格言について問われ、各自の団体が進める活動を通して、それぞれの見解を明らかにしました。ラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!にとって、「グローバル/ローカル」という問題の中心にある課題はレジリエンスです。危機(公衆衛生、気象など)に耐えるシステムを構築するため、さまざまなレベルを組み合わせる必要があります。それにはすべてのアクター間の相互接続性を確保(ネットワーク化)し、モデルの多様化を促進することが必要になります。辻教授にとって、ローカルな行動はローカルな思考によって導かれるべきものであり、グローバル化モデルから脱却しなければなりません。リコーのような企業にとっては、環境経営は生産面(製品を小型軽量化し、材料消費量や輸送に伴う環境負荷を低減)と、ユーザーによる消費面(使用済み製品回収システムの設置)の両面があります。

 司会者の元村有希子氏は、若い世代の教育問題についても取り上げました。パネリストの証言を通して、フランスと日本の間に大きな開きがあることが明らかになりました。フランスでは持続可能な開発は今や小学校から高校に至るまで、学校の教科書に載っている一方、日本では持続可能な社会や倫理的消費の理念は2020年度に予定される教育改革で小学校のカリキュラムにようやく導入されます。とはいえ、パネリスト全員がフランスでも日本でも、若い世代の方が上の世代よりも持続可能な開発や責任ある消費の問題に対する意識が全般的に高いという認識で一致しました。例えばフランスでは、若者に人気の主要ユーチューバーが2018年11月半ば、皮肉をこめた叫び「準備OK」を盾に、環境のための大規模なチャレンジキャンペーンを開始します。ラ・リュシュ・キ・ディ・ウイ!も啓発活動にSNSを活用しています。例えば「#fourchettepower」(フォークの力)キャンペーンは、消費者一人ひとりに日々の食品選択を通して大きな力を発揮できることを改めて気づかせることが狙いです。

 こうした動きは、政府が動き出すのを待つことなく、個々人がまとまって活動を進める能力があることを物語っています。とはいえ、エレーヌ・ビネ氏がフランスの使い捨てレジ袋禁止を例として挙げながら指摘したように、政府の行動も時には不可欠です。たとえ不人気でも断固とした政治行動が必要なときがあるからです。辻教授は日本政府の消極姿勢や火力発電所に対する支持を問題視するとともに、日本の世論の遅れを指摘し、メディアや教育システムにも責任があるとしました。

 聴講者との質疑応答は、日本やフランスの過剰な食肉消費、企業の経済モデル、フランスの都市農業、日本企業の意思決定プロセスにおける若手社員の役割など、さまざまな問題が取り上げられ、討論をより充実させるものになりました。

 パネリストは結果的に共通のメッセージを浮かび上がらせることになりました。それは環境のために行動する力が一人ひとりにあるということです。日々の暮らしの中で、食べるためやエネルギーや備品を補給するために行う選択を通して、フランスと日本の消費者市民は自らの声を企業に伝えることができます。宿命論的な言説にとらわれることなく、人はだれでも「解決の一部になるために行動できる」ことを末吉里花氏は改めて指摘しました。

共催

  • 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
  • アンスティチュ・フランセ・パリ本部(ダランベール基金)
  • フランス環境連帯移行省
  • 毎日新聞社

オフィシャルパートナー

  • ヴェオリア・ジャパン株式会社

後援

  • 環境省
  • フランス国庫総局
  • 国際連合開発計画東京事務所
  • Japan Youth Platform for Sustainability
  • デザイン・フォー・チェンジ
  • 350.org Japan

関連資料

PDF - 1.9 Mb
関連資料「フランスにおける持続可能な開発目標(SDGs)の実施」
(PDF - 1.9 Mb)

最終更新日 10/12/2018

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