SAKURAプログラム 15周年-これまでの気候変動が西アフリカのミレットとソルガムに及ぼした生産被害 [fr]

 フランスのピエール・エ・マリー=キュリー大学 海洋学・気候研究所(LOCEAN)と、日本の農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)農業環境変動研究センターの研究員が2017年から2018年まで、日仏交流促進事業「SAKURAプログラム」の支援を受けて行った共同研究を紹介します。

 フランスの側責任者であるピエール・エ・マリー=キュリー大学のバンジャマン・スルタン研究員と、日本の研究責任者である農業・食品産業技術総合研究機構の飯泉仁之直主任研究員にインタビューしました。

プロジェクトのテーマを簡潔に説明してください。

 気候変化(地球温暖化)が世界的に進行しており、特に低緯度地域で穀物生産に被害が生じています。しかしながら作物生産における温暖化影響を検出する評価は、主に主要生産国の主要穀物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ)を対象としており、食料安全保障が十分に確立していない開発途上国では信頼性の高い知見が不足しています。そこで本プロジェクトでは、農研機構農業環境変動研究センターとピエール・シモン・ラプラス研究所が共同で、西アフリカのミレットとソルガムを対象に最近の温暖化影響を評価しました。その結果、温暖化による西アフリカ全体での年間の生産被害額はミレットで23.3~40.2億ドル、ソルガムで7.3~21.7億ドルに達すると推計されました。

あなたの研究テーマにおいて、SAKURAプログラムを通して行われた日仏共同研究の最も価値のある点はどのような点ですか?

 SAKURAプログラムを始めるまで、日本側にはミレットとソルガムの生育・収量を予測できる生理生態的な機構的作物モデルがありませんでした。一方、フランス側は西アフリカで十分に検証されたミレットとソルガムの作物モデル(SARRA-H)がありました。しかしながら日本側には主要穀物を対象とし、技術進歩による収量増加を陽に扱うことができる作物モデルがSAKURAプログラムを始める前からありました(CYGMA)。日本側とフランス側が知見を持ち寄った結果、CYGMAモデルがミレットとソルガムに適用可能になり、SARRA-Hモデルの結果と比較することで検証されました。これら両方のモデルを使用することで、西アフリカにおけるより信頼性の高い温暖化影響が実施できました。また日本側からフランス側には、これまでの温暖化影響を評価する上で有用な極めて独自性の高い気候データを提供できました。

このプロジェクトから、どのような科学的・学術的な機会や結果を期待しますか?

 フランス側の研究代表者であるバンジャマン・スルタン研究員とは、西アフリカで重要な穀物種を含めるための作物モデルの改良(例えばピーナッツ)や、これまでの平均的な温暖化による生産影響だけではなく、干ばつなどの特定の極端現象による生産被害に対する温暖化影響の評価、バイアス補正手法の差異に由来する影響評価結果の不確実性の評価といった新たな研究テーマを議論しています。今後、研究資金を獲得するために、日本側とフランス側が共同で新たな公募に応募する予定です。

日本との協力関係の発展を希望する研究者にSAKURAプログラムを薦めますか?

 薦めます。研究テーマや日本側とフランス側がそれぞれ有する技術や知見の組み合わせの相性によりますが、フランスとの国際共同研究を始める上で、SAKURAプログラムは極めて有用でした。現在、そこで培われた協力関係を活用して次の研究に取り組むことを計画していますが、日仏の国際共同研究チームとして応募するための適当な研究助成公募の種類が、日本では限定的である印象を持っています。日本またはフランスで、そうした種類の研究助成公募が充実することを希望します。

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SAKURAプログラムについて

 本プログラムは、フランス側はヨーロッパ・外務省と高等教育・研究・イノベーション省、日本側は独立行政法人日本学術振興会の支援を得て、若手研究者間の新たな協力を促進するとともに、日仏両国の研究機関・大学間で学術・技術交流を発展させることを目的とします。

最終更新日 01/02/2019

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