アニエス・ヴァルダ死去 [fr]

 フランス大統領府は3月29日、アニエス・ヴァルダ監督の死去を受けて声明を発表しました。

 アニエス・ヴァルダが今朝、他界しました。映画界、写真界、造形美術界の巨匠との死別は、フランスの創造活動に極めて大きな喪失感を与えるでしょう。

 彼女はあまりに自由で、ちゃめっ気たっぷりだったので、事物や人物にその優しさと好奇心にあふれたカメラをまだ向けているように思えました。そこにいることに驚いているかのようにデリケートな様子で、彼女が撮影するのが大好きだった浜辺や村を、あの独特の顔つきとヘアスタイル(根元が白で毛先が赤褐色の2色ボウルカット)で出没し続けているように思えました。

 何よりもまずアヴィニョン演劇祭の記録写真家、次いでヴィユールバンヌ国立民衆劇場の専属写真家だった彼女は1995年、長編映画『ラ・ポワント・クールト』で監督デビューを果たしました。この作品は、後に伴侶となるジャック・ドゥミと出会う3年前、フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』の4年前、ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』の5年前にすでに、新しい映画製作法の幕開けとなるヌーヴェル・ヴァーグの到来を告げていました。ロケ撮影、低予算、軽量機材、同時録音など、この作品は従来の製作法から解放されていました。

 それから65年間、彼女はドキュメンタリーとフィクション、社会派と空想派、真実と詩情からなる先駆的で特異な映画を地道に掘り下げました。

 フィクション作品の中でも、その独特の時間性から『5時から7時までのクレオ』が特に思い出されます。医療検査の結果を待ちながら、病気ではないかと心配し、人生最後のときを生きていると信じ込み、強い不安を抱いてさまよい歩く若い女性の姿をリアルタイムで追う映画です。監督は時間の濃密さを利用しながら、人間の現実と真実にできる限り密着しました。アニエス・ヴァルダは最も革新的な映画的実験のほかにも、最も貧しい人々にスクリーンに登場する権利を与えることに熱心でした。例えば『冬の旅』は、放浪生活を送るホームレスの女性が、やがて空腹と寒さに負け、孤独と無関心の中で息絶える姿を追う作品です。

 ドキュメンタリー作品は、世界や人々に常に驚きを感じていた1人の女性の飽くなき好奇心を物語っています。中でもおそらく最も有名な『落穂拾い』は、経済的な必要性やエコロジー的信念から、町中や畑で、収穫後や市場の終了時に残り物を回収する人々に関心を寄せる作品です。

 カメラを手にしたアニエス・ヴァルダもまた落ち穂を拾う人でした。世界の映像をあちこちで拾い集め、注意を引かないものが持つ意義を明らかにし、暗いものや醜いものに見えかねないものに隠された美しさに光を当てました。

 彼女は私たちの目を開かせ、ものの見方を覆し、見方を教え直しました。それは最も偉大な映画作家たちがわれわれに差し出す贈り物です。

 フランス共和国大統領はご遺族、すべての近親者の方々、映画界に哀悼の意を表します。

最終更新日 01/04/2019

このページのトップへ戻る