日本とフランスの中性子施設で超高圧状態にある物質を観察 [fr]

 フランスのソルボンヌ大学鉱物・物性物理学研究所/国立科学研究センター(CNRS)と東京大学地殻化学実験施設が2013年から2014年まで、日仏交流促進事業「Sakuraプログラム」の支援を得て行ったプロジェクトを紹介します。

 宇宙に存在するほとんどの物質は、実は数千気圧から、高いものでは100万気圧を超えるような超高圧の状態にあります。例えば地球の中心部では、鉄が360万気圧もの高圧状態で存在しているのです。このような超高圧状態での構造や電子状態、振動状態といった物質の基本的な性質を理解することは物質科学における重要な課題です。

 通常、このような超高圧状態にある物質の構造を見るには、0.1 mmにも満たないような小さな試料を高圧容器に入れ、放射光という強力なX線を利用します。しかし、X線は水素のような軽い元素の位置を決定することや、磁気構造を決めるという用途には向いていません。そこで中性子の出番となるのです。

 実は、世界でも最強クラスの中性子を発生させることができる施設が日本にあります。茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設です。この施設にはPLANETという高圧実験に特化した実験装置(ビームライン)があります(写真)。

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 高圧中性子科学の分野で世界をリードする東京大学とパリのソルボンヌ大学の共同研究チームは、2013年から2014年の日仏交流促進事業(SAKURAプログラム)と、同プログラム終了後はCNRSの支援を受けて、超高圧下にある氷や塩をはじめとする様々な物質の構造を中性子を用いて調べています。例えば、2万気圧を超えるような状態で存在する氷VII相という高圧氷には、リチウムイオンや塩化物・臭化物イオンといったイオンが構造中に取り込まれることが、彼らの研究によって明らかにされています。このようなイオンが取り込まれた高圧氷は、木星や土星の衛星の主要な構成物質と考えられています。

 また、彼らは同様の研究をフランスのグルノーブルにあるILLという中性子施設でも展開しています。さらに、彼らは日本で開発されたナノ多結晶ダイヤモンドという極めて硬い物質を高圧容器に用いるという、新たな実験技術の開発も行っています。

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SAKURAプログラムについて

 本プログラムは、フランス側はヨーロッパ・外務省と高等教育・研究・イノベーション省、日本側は独立行政法人日本学術振興会の支援を得て、若手研究者間の新たな協力を促進するとともに、日仏両国の研究機関・大学間で学術・技術交流を発展させることを目的とします。

最終更新日 16/04/2019

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