フランスのダーイシュ対策は? [fr]

 イラクとシリアにおけるダーイシュ(「イスラム国」)の勢力拡大に直面し、このテロ集団を国際社会に対する脅威とみなす国際的な有志連合が2014年9月に形成されました。65カ国・機関が参加する有志連合は、軍事的手段を含めた必要なすべての手段を用いて、ダーイシュの能力を壊滅させることを目的とします。

 有志連合の行動は5つの作業部会を中心に進められます。各作業部会の目的は以下のとおりです。

  • ダーイシュと戦うイラク治安部隊とシリア穏健派グループを現地で支援する
  • 外国人テロ戦闘員のシリアやイラクへの流入を防止する
  • ダーイシュの資金源を枯渇させる
  • 難民や国内避難民をとりわけ人道面で援助する、奪還した地域への難民や国内避難民の帰還を支援する
  • ダーイシュの言説に反撃し、我々が守る価値観を推進するため、戦略的広報政策を策定する

 フランスはこの集団的努力に全面的に参加しています。

軍事面

 フランスは対ダーイシュ有志連合の軍事行動に貢献する主要国の一つです。我々はこの枠組みで以下のように行動しています。

  • イラクでは、2014年9月以来、特にクルド人治安部隊をはじめとするイラク治安部隊のために、航空行動や助言および教育活動を実施
  • シリアでは、2015年9月7日以来

 フランスは2015年11月13日にパリとサン=ドニで発生した同時多発テロを受けて、シリア領土上空からの航空作戦を強化しました。ラファール戦闘機6機とアトランティック2対潜哨戒機1機を展開し、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地から作戦を遂行しているほか、ヨルダンのアル・サファウィ基地にミラージュ2000戦闘機6機を駐留させています。これらの手段は現在、空母シャルル・ド・ゴールを中心に構成された海軍航空隊により強化され、レバントにおけるフランスの行動能力が3倍に増強されています。

 フランスがイラク介入を開始して1年後にシリアに介入し、現地の勢力均衡が変化しました。ダーイシュが2014年夏に開始した大規模攻撃は阻止され、一部の占領地域が奪還されました。イラク治安部隊は10月17日、シリア北部の都市バイジを解放し、数週間前よりラマディで進軍を続けています。クルド人治安部隊ペシュメルガが11月13日、シンジャルを奪還しました。

 有志連合の軍事行動によって、現地で戦略的勝利を重ねた上、ダーイシュの最も戦略的な陣地(司令部、訓練施設、石油インフラ)を標的にしながら、テロ組織を持続的に弱体化させました。

 有志連合が2015年11月にシリアとイラクで行った空爆は、とりわけダーイシュの石油収入の43%に被害を与えました。

政治面

 フランスおよびパートナー諸国の増強された軍事努力は、シリアとイラクの危機に政治的解決がもたらされない限り、全面的に効果を発揮するには至りません。こうした観点から、シリアに対するフランスの立場は明確で一貫しています。アサドは政治的プロセスの出口にはなりえません。単なる道義的問題ではありません。実効性の問題でもあります。テロリズムと戦うにはシリア人の結集が不可欠であり、バッシャール・アル=アサドには求心力がないからです。

 こうした状況で危機を解決し、過激主義を持続的に減少させることができるのは、ジュネーヴ声明(反体制派とアサドを除く政権側の構成員を含み、シリアの諸制度を保持)に基づいた政権移行だけです。フランスとパートナー諸国は新政権の樹立と、最後に新たな選挙の実施を定めたウィーン・プロセスの枠内で、こうした方向に沿って尽力しています。

 イラクでは、危機に対する唯一の永続的な解決は政治的解決です。フランスはイラク政府の改革の努力を支援するとともに、アバーディー政権が2014年秋に国民和解のために発表した諸措置を速やかに導入するようイラク当局に働きかけています。この国民和解プログラムの実行は、ダーイシュに打ち勝つ唯一の道である、危機の永続的な解決に不可欠な条件です。

 フランスは2015年9月8日、中東における多元主義と民族的・宗教的多様性を守るために、中東における民族的・宗教的理由による暴力の被害者に関する国際会議でヨルダンと共同議長を務めました。この会議では、迫害を受けた住民を支援するため、3つの側面(政治、人道、司法)を含む行動計画が採択されました。

 シリアとイラクでダーイシュにかけられた圧力によって、リビアがテロ組織の退却場所になってはなりません。この国を揺さぶる政治的危機に対する解決策を見いだすことが喫緊の課題である理由もそこにあります。そのためにフランスは、リビア内部合意の署名を支援するため、地域レベルおよび国際レベルで、すべてのパートナーと緊密に連携して尽力しました。これは国連が1年以上にわたって仲介した成果であり、国家分裂に終止符を打ち、移行期間への道を開くとともに、統一政府を可及的速やかに樹立することをめざします。統一政府が唯一、ダーイシュの勢力拡張とリビアにおける人身売買を効果的に防止できます。

法制・安全面

フランス国内レベル

 フランスは外国人戦闘員問題と帰国の可能性に対処するため、以下のような措置を講じました。

  • 2014年4月:極端な過激化・テロ組織対策計画の採択、過激化した個人の近親者を援助するための全国援助・過激化防止センター(CNAPR)の設置
  • 2014年11月:テロ対策関連措置を強化する法律の公布(出国禁止手続きの新設、テロリズムを礼賛するウェブサイトの遮断を言い渡す可能性)
  • 2015年1月:ヴァルス首相が国内のテロ対策の仕組みを強化するための特別措置(司法・治安機関の人的・物的手段の強化、過激化事象の強化された検出能力、過激化した個人の一段と徹底した追跡調査など)を発表
  • 2015年7月:脅威の実態を考慮に入れるため、情報収集機関により多くの手段を与えながら、その活動に枠をはめる、情報収集に関する法律の公布
  • 2015年11月:2015年11月13日にパリとその周辺を襲ったテロの重大さと同時多発性および脅威の持続性が、フランス全土に発令された非常事態宣言の正当性を裏付けています。非常事態宣言は特別な事態に対する国の行動を強化するため、行政機関の権限を期間を限定して拡大します。

ヨーロッパ・レベル

 ヨーロッパ連合(EU)は2014年10月、シリアとイラクに主軸を置いたテロリズム・外国人戦闘員対策戦略を採択しました。EUは2015年3月、シリアとイラクを対象とした地域戦略を策定。この包括的アプローチは、EUと各加盟国との間でよりよい行動連携を促進することを目的とします。

国連レベル

  • ダーイシュの責任者と戦闘員を国連制裁リストに定期的に登録(資産凍結、渡航禁止など)
  • ダーイシュおよびアル・カーイダとのすべての商取引を非難する国連安保理決議2170を2014年8月に採択
  • 外国人テロ戦闘員問題に対する国際行動を強化する国連安保理決議2178を2014年9月に採択
  • 特に石油や古美術品をはじめとする直接的または間接的な取引を全面禁止し、ダーイシュの資金源を枯渇させることを目的とした国連安保理決議2199を2015年2月に採択
  • ダーイシュおよびアル・カーイダ系武装集団対策の拡大を呼びかける国連安保理決議2249を2015年11月20日に採択

資金面

 フランスはヨーロッパや世界のパートナーの側に立って、ダーイシュの資金源の枯渇に全力で取り組んでいます。

 国際レベルでは、2015年2月12日に採択されたテロ資金調達に関する国連安保理決議2199の採択で積極的な役割を果たしました。同決議は特に石油や古美術品をはじめとするさまざまな不正取引を防止するため、追加措置を講じるよう国連加盟国に呼びかけています。

 対ダーイシュ国際有志連合の枠組みでは、このテロ組織の資金源枯渇のための作業部会に参加しています。軍事面では、有志連合の攻撃でダーイシュ支配下の多数の製油所が破壊され、石油販売で得る収入を減少させました。

 金融活動作業部会(FATF)でも牽引役を果たしています。テロ資金調達分野で急浮上するリスクに関する報告書の作成をアメリカと共同で指揮しました。

 EUにおいては、とりわけ資産凍結の効果的な仕組みの設置を訴えるとともに、電子マネーのような銀行以外の支払い方法の監視能力を高めるよう求めています。

 国内レベルでは、テロ行為を実行または未遂、さらに関与、ほう助、資金供与を行った個人に対する資産凍結の仕組みを整備しました。

 フランスは美術品や古美術品の不正取引の防止にも取り組んでいます。フランソワ・オランド大統領は11月17日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)で、文化財輸入に対する税関検査を導入するとともに、危険な状態にある文化財を受け入れるための「避難所」を国内に設置する方針を明らかにしました。

人道面

 ダーイシュの残虐行為の被害を受けた民間人を救援するため、一連の補完的な行動を進めています。

  • シリア・イラク難民の第一次庇護国(レバノン、ヨルダン、トルコ)における人道支援。フランスは2012年より、戦闘を逃れた住民に対する緊急支援の実施や、シリア周辺国で難民を受け入れる地域社会のレジリエンス(強靭性)の向上のために、国際機関やNGO(非政府組織)が取り組むプロジェクトを支援しています。フランスは2015年と2016年、地域で活動する人道関連の国連諸機関を支援するために1億ユーロを追加援助します。
  • シリア・イラク難民の受け入れ。オランド大統領が改めて表明したように、ヨーロッパは庇護権を享受する難民をその尊厳を守って受け入れなければなりません。フランスはヨーロッパの枠内における約束の履行、さらに国連難民高等弁務官事務所と実施した第三国定住・人道的受け入れ計画の名目下で難民を受け入れています(インフォグラフィック『フランス、シリア難民受け入れ国』を参照)。
  • 中東における民族的・宗教的理由による暴力の被害者の支援。フランスは2015年9月8日、中東における民族的・宗教的理由による暴力の被害者に関する国際会議でヨルダンと共同議長を務めました。この会議では、迫害を受けた住民を支援するため、3つの側面(政治、人道、司法)を含む行動計画が採択されました。この機会に2015年と2016年の期間で、1,000万ユーロの全国緊急基金が設立されました。住宅、教育、職業教育、保健、地雷除去、不可罰性対策の各分野の活動に資金を提供することを目的とします。
  • フランスは人道的アクセスや民間人に対する無差別攻撃の停止など、シリア国内で国際人道法が順守されるように力を尽くしています。

2015年12月更新

最終更新日 20/01/2016

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