インド太平洋、コロナ・ヨーロッパ・外務大臣が韓国で演説 [fr]

 カトリーヌ・コロナ・ヨーロッパ・外務大臣は4月15日、韓国に寄港中のフランス海軍哨戒フリゲート「プレリアル」の艦上で、インド太平洋に関する演説を行いました。

(日本語仮訳)

 艦長、

 フリゲート「プレリアル」艦上に迎えていただき、感謝申し上げます。このたびは母港とする仏領ポリネシアから長い航海を経て、大韓民国に寄港されましたが、後ほど触れますように、艦長にとっても、乗組員にとっても、安寧な航海ではありませんでした。我が国に奉仕する艦長以下乗組員全員の献身的な姿勢に敬意を表します。

 我が海軍が本土から遠く離れたところに、我々の安全保障上の利益にかかわる戦略的な地域にいるのは、特別なことではありません。これらの海域は、フランス海軍も、フランスもよく知っています。ですから本日、プレリアル艦上で皆さまとお会いするのも偶然ではまったくありません。この機会に皆さまと、いくつかのメッセージを共有させていただきたいと思います。

 私の最初のメッセージは、フランスの韓国との連帯です。

 朝鮮戦争休戦70周年が近づく中、私は韓国の友人の皆さまに、これまでと変わらず今日も明日も皆さまの側に立つフランスのコミットメントに期待できると申し上げたいと思います。仏韓両国は歴史によって結びついています。両国は民主主義、人権、両国の自主独立はもとより、国際連合の多国間システムの枠組みにおけるすべての国の自主独立を重視する同じ姿勢に基づいた同じ世界観を共有しています。

 北朝鮮の暴走に直面し、同国の核・弾道ミサイル計画の違法な進展に直面する中、我々は韓国の側に立ち続けます。我々は北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化の必要性について妥協することはありません。我々はすべての国に課せられた安全保障理事会諸決議を順守させるべく、引き続きフリゲート「プレリアル」のように、我々の外交的・軍事的手段を動員していきます。

 この北からの脅威の背景には、緊張の高まりと法に基づく国際秩序を根底から揺るがす状況があります。

 これはインド太平洋において特に言えることです。私の2つ目のメッセージは世界のこの地域に関するものです。

 この地域がフランスにとってどれほど重要性であるかについて、改めてここで申し上げるまでもありません。フランスはインド洋と太平洋に領土を有し、排他的経済水域の面積が世界2位であるうえ、軍事計画法に基づき、今後数年間で大幅に強化される予定である恒久的な主権的手段を有するヨーロッパで唯一の国です。

 ロシアのウクライナ侵略戦争によって、我々がインド太平洋から目をそらすことは一切ありません。インド太平洋諸国も、あれはヨーロッパの危機にすぎないと考えて、ウクライナ戦争から目をそらさないことが重要です。すべてが関連しています。いずれの事例にせよ、我々の共通の憲章である国連憲章の最も基本的な原則、すなわち各国の主権と領土保全の尊重を確保することが重要です。

 ロシアが今日罰せられることもなく、これらの原則をヨーロッパで踏みにじるままにしておけば、一つの前例をつくることになります。エマニュエル・マクロン大統領が国連総会の壇上で想起したように、もし侵略が報われれば、よそで新たな侵略が起こり、だれも安全ではなくなります。

 法に基づく国際秩序がまさに危機にひんしています。国際秩序を守ることは、気候や環境をはじめとするグローバル公共財の保全とともに、2018年にフランスで採択されたインド太平洋戦略の核心です。

 フリゲート「プレリアル」の航跡と任務はその完璧な例証です。同艦は何よりもまず、太平洋諸島フォーラムのため、違法漁業対策ミッションを遂行しました。これはフィリピン沿岸警備隊および我々の戦略的パートナーであるベトナム海軍とともに実施されました。次いで台湾海峡を通って韓国に向かう前に、カンボジア海軍のために教育訓練を実施しました。プレリアルは数日前、海洋法に従って、他のフランス艦艇が南シナ海でそうするように、台湾海峡を通過しました。

 フランスにとって、自由で開かれた、繁栄し、公共財を尊重するインド太平洋を守るためには、法を順守すること、すべての関係国・機関と可能な限り包摂的な協力を追求することが不可欠です。

 フランスは安定と法を重視する責任ある大国間のパートナーシップの論理に基づいて、他国の戦略的自律のために役立てる自国の戦略的自律を極めて重視します。我々の目標は、マクロン大統領の言葉を借りれば、すべての国が自国の主権の自由を有することです。

 それは今年で25周年を迎えるインドとの戦略的パートナーシップの核心です。それは我々がインドネシアと一歩一歩築いている戦略的パートナーシップの趣旨でもあります。それは我々が特別なパートナーシップの枠組みにおいて、日本と追求している協力の意味するところでもあります。それは我々が大韓民国と取り組みたいと強く願っていることです。私はインド太平洋に対する貴国の野心を歓迎します。我々はこの野心について完全に一致します。

 我々は地域の平和と安定を守ることを極めて重視します。地域の海上での緊張に対してもしかり、我々の戦略的パートナーであるインドの国境についてもしかり、台湾に関してもしかりです。この問題について、マクロン大統領が想起したように、フランスは自らの政策、すなわち現状維持政策を堅持します。我々はあらゆる一方的な現状変更にも、海峡におけるいかなる武力行使にも反対します。このアプローチは、我々のすべてのヨーロッパの同盟国のものであるとともに、アメリカのものでもあります。

 ヨーロッパに言及しているので、我々が先週、中国で行ったように、独自のモデルとビジョンを掲げる強いヨーロッパのために主導的な役割を果たすというフランスの野心を、ここで、世界のこの地域で想起します。

 それはインド太平洋において特に言えることです。

 フランスはこの地域において、ヨーロッパ連合(EU)が野心的な戦略を持つよう尽力しました。それはパートナーの能力強化、公正な貿易関係の発展、最高水準の基準を満たすと同時に依存関係を生まないプロジェクトへの支援、普遍的価値の促進を柱とします。というのも多くの普遍的価値があるからです。

 我々の信念は、EUが安全保障の側面を超えた多角的なアプローチを通して、インド太平洋に独自の付加価値をもたらすというものです。この包括的なアプローチは、我々が直面する安全保障、環境、経済、社会に関する諸課題に対する地域の強靭性を強化できる唯一の道です。

 それがEUのイニシアティブ「グローバル・ゲートウェイ」の目標です。これによってパートナー諸国の環境、エネルギー、デジタルに関する移行を加速させると同時に、ヨーロッパとの連結性を向上させることができます。

 この枠組みにおいてフランスは、EUと同様だと思いますが、中国に対してバランスのとれたアプローチを維持する決意を明確にしています。すなわち、体制間対立や競争の側面を軽視しないこと、つまり戦略的利益をしっかり守ること、その一方で可能なところでは建設的かつ協力的な関係に到達することを目標とします。これがヨーロッパの対中姿勢3本柱です。中国がますます自己主張を強める中、この姿勢はまさに的確であり続けています。

 というのも、どうしたら世界の主要な課題を中国なしで解決できると考えられるのでしょうか? 例えば気候変動でも健康でも、さらに広範にわたる課題を、中国なしでは解決できません。どうしたら中国と前向きな行動計画を立てようと努力せずに、我々が対立しうる問題についても、対立しうるからこそ、一致点を見いだそうとせずに前進できるのでしょうか? 我々は中国と厳しい、率直で、直接的ながら、胸襟を開いた対話を望んでいます。

 ブロック対立の論理を全面的に拒否するこのヨーロッパのインド太平洋戦略は、大韓民国のアプローチや同じく包摂的かつ協力的なアプローチを掲げる「インド太平洋に関するASEANアウトルック」と明確な一致点があります。我々は2022年にASEAN開発パートナーと拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)オブザーバーの地位に就いたことにより、このインド太平洋の中心的な機関と一層協力する決意です。

 我々の戦略はニューカレドニアと仏領ポリネシアが加盟する太平洋諸島フォーラムの2050年戦略とも完全に調和しています。我々は今年、気候変動対策と環境保全対策に関する同フォーラムの優先課題に対応するため、南太平洋への介入手段を2.5倍に増やしました。これは始まりにすぎません。とりわけ我々のパートナーであるオーストラリアと、太平洋の側面を中心に据えた新たな2国間ロードマップに向けて取り組んでいます。

 私は大韓民国が「自由、平和、繁栄のインド太平洋」戦略の一環として、ASEANおよび太平洋諸島フォーラムとの協力も優先課題に掲げていることを嬉しく思います。韓国当局との昨日の会談で確認した両国のアプローチの明確な一致点に感銘を受けました。これらの一致点に基づきながら、どのように我々の努力を調整できるか、ひいては共同プロジェクトを進められるかについて韓国当局と決めることが、まさに私の訪問目的の一つです。

 お分かりのように、ヨーロッパにおける戦争の再来にもかかわらず、フランスは自国の将来とEUの将来がインド太平洋地域に大きく左右されることを、かつてないほど強く認識しています。フランスは地域の緊張を緩和し、安定を守り、普遍的価値を促進し、主要な地球規模課題に立ち向かうために協力すべく努力するため、この地域でかつてないほど独自の声を上げる決意です。

 フランス万歳、大韓民国万歳、仏韓友好万歳。

関連記事

最終更新日 09/05/2023

このページのトップへ戻る