新型コロナウイルス危機からのヨーロッパ復興のための仏独イニシアティブ [fr]

 エマニュエル・マクロン大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相は5月18日、共同記者会見で、新型コロナウイルス危機からのヨーロッパ復興のための仏独イニシアティブを発表しました。

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 現下の危機はヨーロッパ連合(EU)の歴史上未曾有のものです。いかなる生き方、いかなる雇用、いかなる企業も、この世界的なショックを免れることはありません。われわれの社会と経済が制限措置から脱しつつある中、多大な不安が残っています。とはいえ、われわれの目標は明確です。それはヨーロッパがこの危機を共に乗り越え、より強くなることです。われわれの共同の努力は、EUのために持続可能な復興を実現するという意思に導かれています。われわれ、フランスとドイツは、EUに対する責任を果たすという不退転の決意であり、危機から脱するための道を開くことに貢献していきます。

 そのために、われわれはヨーロッパ人として、共同行動から引き出す力をかつてないほど有効に利用し、これまでにない方法で力を結集しなければなりません。

 われわれは今般の危機から引き出すべき教訓について、掘り下げた考察も進めなければなりません。ヨーロッパの将来に関する会議は、ヨーロッパのプロジェクト、改革、優先課題をめぐる民主的な議論を始めるきっかけとなります。

 フランスとドイツは以下の措置を提案します。

1. EU「健康戦略」によって戦略的健康主権を強化する

 現下の危機と将来の健康危機に対する対応は、戦略的健康主権を基礎とする新しいヨーロッパ・アプローチに基づかなければなりません。われわれは保健システムのヨーロッパの側面を改善し、加盟国の責任を全面的に尊重しつつEUの依存度を下げる、戦略的な位置付けを持ったヨーロッパのヘルスケア産業を心から願っています。それにゆえに、われわれは以下の事項に取り組まなければなりません。

  • EU内で新型コロナウイルスに対するワクチンを開発、生産すると同時に、このワクチンへの世界的なアクセスを保証するという短期的な目標とともに、ワクチン・治療薬分野におけるわれわれの研究開発能力を増強し、国際レベルの連携と資金調達(ACT-Aイニシアティブ)を拡大すること
  • 医薬品・医療用品(防護具、検査キットなど)の戦略的共同備蓄を確立し、EU内でこれらの製品を生産する能力を拡大すること
  • 製薬業界に対して一つの声で発言し、より効果的なヨーロッパおよび世界のアクセスを確保するため、将来のワクチンと治療薬(例えば、潜在的な将来のワクチンの製造と備蓄)の共同公共調達に関するヨーロッパの政策を協調させること
  • ヨーロッパ疾病予防管理センターに保健衛生を担当するEU「タスクフォース」を設置し、各国の機関とともに、将来の感染症流行に対する予防・対応計画の策定を担当させること
  • 健康データの相互運用性に関する共通のヨーロッパ規範(例えば、感染症流行時に事例に関する比較可能な統計を自由に使えるようにする調和された方法論)を定義すること

2. 連帯と成長のためのEUレベルの野心的な「復興基金」を創設する

 EUの成長を立て直し、強化する持続可能な回復を支えるため、ドイツとフランスは次期多年次財政枠組み(MFF)で、野心的かつ時限的で、対象を絞った復興基金の創設と、最初の複数年に集中させたMFFの増額を支持します。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミック(世界的大流行)によってEU全域で経済に影響を及ぼしている困難の特別な性質に鑑みて、フランスとドイツはヨーロッパ条約、EUの予算枠組み、各国議会の権利を全面的に尊重する法的基盤に立ちながら、EUの名義で市場から借り入れをすることで、この復興支援の資金調達を行うことをヨーロッパ委員会に許可するよう提案します。

  • EUの予算プログラムに基づいて、ヨーロッパの優先課題を尊重しつつ、最も大きな打撃を受けた産業部門と地域のために、EU予算支出として5,000億ユーロが復興基金に拠出されます。基金はヨーロッパ経済の強靱性、収斂、競争力を強化し、とりわけエコロジー移行とデジタル移行の分野および研究とイノベーションに対する投資を増加させます。
  • 復興基金の資金供与は、パンデミックに関連した困難とその影響に対象が絞られます。明確に示された総量と期限とともに、独自の財源に関する決定の中に組み込まれた、EU予算に関する次期MFFとは別に、拘束力のある返済計画に関連付けられた、特別な補填です。
  • EUが挑まなければならない大きな課題に立ち向かうため、MFFと復興基金に関する迅速な全体的合意が必要です。交渉は2月までに成し遂げられた進展を土台とします。われわれは可及的速やかに新型コロナウイルス危機に関連した予算を提供できるよう努力します。
  • この復興に対する支援は、各国の努力とユーログループによって決定された一連の措置を補完するものです。これは健全な経済政策と野心的な改革プログラムの実施に対する加盟国の明確なコミットメントに基づきます。
  • とりわけEU内で実効的な最低課税公平なデジタル経済課税を導入し、理想的には経済協力開発機構(OECD)の作業の実りある結論ならびに共通の法人税課税ベースの確立に基づきながら、EUにおける公平な課税を実現するためにヨーロッパの枠組みを改善することが優先課題であり続けます。

3. エコロジー移行・デジタル移行を加速する

 今こそヨーロッパの経済と経済モデルの現代化を加速化すべきときです。この精神に基づき、われわれはヨーロッパのための「緑の契約」(グリーン・ディール)がEUの新しい成長戦略であり、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた道筋に関する、繁栄した強靭な経済のためのロードマップであることを再確認します。それと同時に、われわれは危機下で浮かび上がった傾向を恒久的な進歩およびデジタル主権に変えながら、デジタル移行を加速化しなければなりません。そのために、われわれは以下の事項に取り組まなければなりません。

  • 「カーボン・リーケージ」を回避するための一連の有効な措置と協調しつつ、2030年の排出削減に関するEUの目標を引き上げること。ヨーロッパ委員会が発表した炭素排出国境調整メカニズムに関する提案によって、世界貿易機関(WTO)のルールに基づく既存手段を補完することができます。国家援助に関するルールは、より野心的な気候政策やカーボン・リーケージのリスクに照らして見直されなければなりません。
  • EU排出量取引制度(ETS)への最低炭素価格の導入を支持し、すべてのセクターに向けた将来のヨーロッパETSを確立するよう努めること。
  • 気候と環境に関する目標および/または条件を必要に応じて盛り込んだ、環境に優しい回復のためのロードマップをセクターごとに策定すること
  • とりわけ5Gの展開、安全で信頼性の高いインフラとサイバーセキュリティ技術の獲得に向けた努力、デジタルアイデンティティ管理、人工知能に適した枠組み、EUにおけるデジタル・プラットフォームに対する公正な規制によって、デジタル移行を加速化すること。

4. EUの経済・産業の強靭性と主権を高め、単一市場に新たな弾みを与える

 単一市場内の強力な統合は、われわれの繁栄を保証するものです。ヨーロッパ経済を再起動し、将来に遭遇するであろう課題に適応させるには、強靭性と主権を有する経済と産業基盤ならびに堅牢な単一市場が必要です。開かれた市場と自由で公正な貿易は、解決策の最も重要な要素です。したがって、われわれは以下の事項に取り組まなければなりません。

  • WTOを中心に構成され、特に健康製品貿易分野における新しいイニシアティブを組み込んだ、野心的でバランスのとれた貿易アジェンダを推進しながら、バリューチェーンの多様化を支援すること、(EU域外諸国に対する)反助成金メカニズムを強化すること、EU域外諸国との真の互恵性が公共調達にあるようにすること、EU内の(回帰)投資を奨励しつつ、戦略的分野(特に健康、医療、バイオテクノロジーなど)でヨーロッパ以外の投資家に対する国内およびヨーロッパ・レベルの投資管理を強化すること
  • ヨーロッパ委員会の産業戦略を回復に適応させること、とりわけ国家援助に関するルールおよび競争ルールの適応と(ヨーロッパの援助を可能にする)ヨーロッパ共通利益重要プロジェクトの実行を加速させながら、ヨーロッパの競争政策を現代化させること
  • 単一市場の完全機能状態への迅速な復帰を確保すること、明確なマイルストーンと加速された立法アジェンダとともに、優先分野(特にデジタル、エネルギー、金融市場)で完全に統合された市場を創出することをめざす新しいロードマップによって、単一市場をさらに深化させること
  • 危機時の加盟国間の調整義務を改善し、共通対外国境を強化しながらシェンゲン圏が完全に機能するようにすること
  • 社会的収斂を強化すること、国内の状況に合わせた最低賃金のためのEUの枠組みに関する議論を加速すること

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仏独首脳共同記者会見

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仏独イニシアティブの文書(フランス語)
(PDF - 59.4 kb)

最終更新日 20/05/2020

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