エアバス・グループ、フランス国立科学研究センター 、産業技術総合研究所の共同研究プログラムが始動 [fr]

 エアバス・グループ、フランス国立科学研究センター(CNRS) 、産業技術総合研究所(産総研)は2月12日、東京・港区のフランス大使公邸で、協調ロボットに関する大規模な共同研究プログラムの調印式を行いました。

日仏イノベーション年を象徴するパートナーシップ

 このプログラムは産総研とCNRSによる日仏ロボット工学連携研究体(JRL)が実施します。JRLは科学技術協力の中心的な役割を担う4つの日仏国際混成ユニットのうちの一つです。ヨーロッパを代表する大企業との今回のパートナーシップは、日仏イノベーション年を象徴する出来事です。それと同時に、イノベーションに積極的に投資し、日本における地位を強化したいというエアバス・グループの意思の表れでもあります。

 調印式には産総研の中鉢良治理事長、CNRSのエンジニア科学・システム研究所(INSIS)のジャン=イヴ・マルザン所長、エアバス・グループ・イノベーションズのセバスチャン・レミ社長を含む、フランスから来日したエアバス・グループ代表団が出席しました。この機会に、室内で自分の位置を検出し、移動できる人型ロボットHRP-2の実演が行われました。報道関係者向けに広報スタンドも設置され、JRLで行われたさまざまな開発や、エアバスとの共同プログラムに関する情報が提供されました。
 

Un robot HRP
L'Ambassadeur de France au Japon, Thierry Dana
Dr Marzin, CNRS, Dr Hirukawa, AIST et l'Ambassadeur Thierry Dana
Dr Kheddar, directeur français du JRL et Dr Marzin, directeur de l'INSIS
Sébastien Rémy, directeur d'Airbus Group Innovations, Ryoji Chubachi, président de l'AIST & Jean-Yves Marzin, directeur de l'INSIS au CNRS
Sébastien Rémy, directeur d'Airbus Group Innovations, Ryoji Chubachi, président de l'AIST & Jean-Yves Marzin, directeur de l'INSIS au CNRS
Sébastien Rémy, directeur d'Airbus Group Innovations, Ryoji Chubachi, président de l'AIST & Jean-Yves Marzin, directeur de l'INSIS au CNRS
Ryoji Chubachi (AIST), Abderrahmane Kheddar (JRL/CNRS), Jean-Yves Marzin (INSIS/CNRS)

 

組み立てラインへのロボット導入、大きな技術的チャレンジ

 航空機産業界は、ほかの多くの産業界と同じように、人間の作業員を最も重労働もしくは危険な仕事から解放し、より付加価値の高い仕事に従事させるため、組み立てラインへのロボット導入を望んでいます。とはいえ、航空機製造現場の特殊性によって、組み立てライン作業のロボット化は文字どおり技術的チャレンジとなっています。

 自動車産業で広く普及する基台に固定されたロボットの利用は、航空機器の大きさが原因で航空機産業には適しません。ロボットは機内を自律移動できなければなりません。しかしながら現在の技術は、走行可能な基台を持つロボットの技術に限られるため、段差のない完全に平らな床面にしか適合できません。航空機の組み立て現場では使用できません。

 在日フランス大使館科学技術部は、こうした航空産業に特有の諸問題に取り組もうと、2014年2月25日から27日まで協調ロボットをテーマにシンポジウムを開催するとともに、一連の視察を実施する中で、とりわけエアバス・グループとJRLとの接触機会を設けました。

 というのもJRLは人型ロボット分野で世界最高水準の専門能力を有し、人型ロボットHRP-2とHRP-4で [1]、いわゆる多点接触と呼ばれる新しい動作技術を開発していたからです。このタイプのロボットは、脚部のみならず全身を使って周囲の環境と接触しながら階段を上ったり、狭小な場所に入ったりすることができます。

 多点接触動作によってロボットの安定性と、作業時に適用可能な力が増大します。その上、これらのロボットの人型の形状は、多様な環境の中で数多くの仕事を行うために有用な多機能性をもたらします。

JRL とエアバス・グループの協力関係に新たな一歩

 エアバス・グループとJRLはこのイベント後、他のヨーロッパのパートナーとともに、COMANOIDプロジェクト [2]をヨーロッパのホライズン2020プログラムに応募し、採用されました(ヨーロッパ委員会から助成金425万ユーロ支給)。本プロジェクトは2015 年から4年間の期間で実施され、人型ロボットが機内の組み立て工程に安全な状態で入り、単純な作業を遂行できるようにすることが目標です。

 今年、新しい4年間の共同研究プログラムが始動することは、JRL とエアバス・グループの協力関係にとって、COMANOIDプロジェクトに続く新たな一歩です。このプログラムは人型ロボットに、組み立てラインで特殊な作業を遂行させることをめざします。こうした限られた窮屈な環境下で任務を完遂するには、全身を連動させて使う必要があります。

 これらのテストは、エアバス・グループのさまざまな部門(民間航空機、ヘリコプター、宇宙)のニーズから想定されたシナリオ全体にわたって実施されます。その実現性は年を追うごとに高まる見込みです。今般の協力は航空機産業のニーズに応えるために実現される新たな開発に加えて、ロボット工学の研究面でも、現在のロボットの弱点(例えばデザイン、精度、パワーなど)を明らかにし、10年から15年後をめどに、大規模工場向け第1世代人的ロボットの仕様書を明示することが期待されます。

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[1HRP(ヒューマノイド・ロボット・プロジェクト)は川田工業が産総研と川崎重工業の支援を得て進める人型の生活支援ロボット開発プロジェクト。1997年以来、このプロジェクトから8モデルのロボットが誕生。

[2COMANOIDプロジェクトのパートナーは、フランス国立科学研究センター(CNRS)、エアバス、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)、ローマ・ラ・サピエンツァ大学

最終更新日 11/03/2016

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